地酒には酒蔵ごとの歴史あるこだわりと独創性な味わいが一口ひとくちに凝縮されている。国際唎き酒師として岡山の銘酒を世界に発信している地酒創庫イチローズの平松一郎氏に唎き酒師の役割や岡山のお酒の魅力などについて尋ねた。
TEXT By TSUCHIYA RYOSUKE
国際唎き酒師について教えてください。
簡単にいうと地酒に限らず、日本のお酒について、世界へと発信できる人へ送られます。唎き酒師という職業はもともとありましたが、「国際」と名のついた唎き酒師はここ数年の内に広まりました。
平松さんが国際唎き酒師を目指したきっかけは?
倉敷市が倉敷のお酒を海外で販路開拓しようとしたときに、仕事を受注した貿易会社の社長さんと縁があったのでお話をいただきました。もともとビール会社に勤めていましたが、当時はお酒についてそこまで詳しくなく、また開拓先となったオーストラリアのメルボルンでは酒蔵さんとともに英語でお酒の説明をしなければいけないので、胸をはって紹介が出来るよう、猛勉強して資格を取得しました。
岡山のお酒の特徴について教えてください。
岡山のお酒は、一言で表現すると芳醇。酒蔵によっては旨口とも表現しますが、もっとわかりやすくいうと甘いといえます。東北のお酒は、淡麗で水のようにすっきりとした、辛口なものが多いですが、岡山のお酒は、お米の旨みがよく出ていることが特徴です。地元の美味しいお米と水、温暖な気候と豊かな風土に恵まれた岡山ならではの味わいがにじんでいます。
酒蔵では、どのような酒造りをされているのでしょうか?
お酒というのは基本、脇役。料理を引き立てるものとして造られ続けているので、どの酒造も岡山の料理にあうものを洗練して造っておられます。
岡山の地酒について、海外の方はどのような印象を持っていますか?
岡山はどちらかというとマイナー。そもそも岡山がどこにあるのか知らない方が多いです。ですが、実際に岡山のお酒を飲んでいただくと「岡山ではこんなにおいしいお酒を造っているんだ!」ととても喜んでもらえます。岡山の酒米といえば、なんといっても雄町米。米が軟らかで溶けやすく、濃醇な味のお酒が生まれます。近年ではその味を評価をされ、全国の有名蔵で使用されるようになりました。
なぜ雄町米が全国へ広まったのでしょうか?
今、日本で一番有名なのは山田錦という酒米です。品評会では必ずといっていいほど賞を受賞される酒米なのですが、どの酒蔵も山田錦を使うとどうしても味が似通ってしまいます。「新しい酒米で出来の良い味に挑戦したい」という酒蔵さんも多く、だからこそ山田錦の祖先にあたる雄町米が注目されたのだと思います。(山田錦は雄町米の品種改良から生まれた)
雄町米は酒造好適米の最高級品種として評価が高く、昭和初期には酒米の最優良品種として全国で使用されており、開始当初の全国清酒鑑評会では「雄町でなければ金賞が取れない」とも言われていたそうです。
お酒にあう食べ物とおすすめの飲み方はありますか?
お酒は料理を引き立てるように作られているのでやはり和食だと思います。普通酒を熱燗で飲むと料理の味を邪魔しないので美味しいですよ。また、香りの華やかな吟醸酒ならショットがおすすめ。ぜひストレートで飲んでもらいたいです。
最後に、平松さん自身の今後の目標を教えてください。
お酒を仕入れて売ることももちろん大切ですが、ORIGINやTOVINTAGEのように、こういうお酒もヒットするんじゃないかと想定し、新しい自社商品を岡山の酒造さんとともに造り上げていく挑戦も変わらず続けていきたいと思います。